ースウエーデンにおけるクリスマスの迎え方(その2)ー
クリスマスを迎える日までの4週間は、アドベント・シーズンという大切な期間です。
では、12月中は、クリスマスまでに大きな祝祭はないのでしょうか?
あります! スウエーデンを中心としたスカンジナビア諸国と南欧では12月13日に「聖ルチア祭」という祝祭が伝統的に行われています。
「聖ルチア祭」に関しては、日本人の多くが知らない行事だと思います。ところが、この祝祭で歌われる曲は、(おそらく)ほとんどの日本人が知っているのではないでしょうか? なぜなら、その曲は子供のころに音楽の教科書で習ったからです(もちろん、日本の教科書ですよ)。
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私がマルメという南スウエーデンの町で住んでいた時のことです。12月に入ると「幼稚園で習ってきた歌なのよ」と、4歳の娘が大きな声で歌いだしました。その歌を聞いた時に、私はとても驚いてしまいました。
「さんたーる ちあー!」だったのです。
日本の小学校や中学校で習う、あのナポリ民謡です。『ナポリの美しい港、その情景を歌った曲』として教わった覚えがありますよね? 今は習わないのかな?
イタリア・ナポリの港:サンタルチア
娘に聞いてみると『ルチアさまのお祭りで、みんなで歌うのよ』というではないですか!
なぜ、イタリア・ナポリの民謡をスウェーデンで?
クリスマスを待つ、大切なアドベント・シーズンに行われる「聖ルチア祭」って、なに?
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聖ルチア祭とは:
キリスト教の聖人『聖女ルチア』の聖名祝日を祝うものです。1年で最も夜が長い12月13日(旧暦の冬至)に行われるスウェーデンでは国民的行事といえます。1927年:ストックホルムの新聞社でルチア様役を公募したことを発端として、地方紙を通じて国中にコンテストが行われるようになったのです。昔は地元の新聞にルチア様役に応募した女性の顔写真が掲載され、市民投票で選ばれたそうです。
祝祭でどんなことをするの?
聖ルチア祭は、室内で行われます。サンタルチアを歌いながら子供達がそろって行進して入場し、その後数曲クリスマスキャロルを合唱し、またサンタルチアを歌いながら退場します。その中に頭にロウソクを立てている女の子がいます。その子が聖ルチア役なのです。
👆行進の謎について
ルチア様は、頭にロウソクをのせ、白いドレスを着ています。そして、ルチア様の後を『ターナ』と呼ばれる女の子たち、さらに白い帽子をかぶった『星の子供』たちが続いて行きます。
1.みんなで歌う「サンタルチア」:曲のメロディーは、ナポリ民謡と同じです。しかし、北欧で歌われる歌詞は、原曲と異なっています。『ルチアが闇の中から光と共に現れた』という内容に変えられているのです。さらに北欧諸国においても、それぞれの言語で歌われ、歌詞の内容も少し違うのです。特に、聖ルチア祭を古くから行ってきたスウェーデンでは、歌詞も3種類(①子供向け ②大人向け ③キリスト教概念を感じるもの)あります。
2.ロウソクは、生命を奪うことを拒む火の象徴です。
3. 星の子供たち: スウェーデンでは、古い伝統行事である「星の子供たち(白い服を着て天使の服装をする)」がルチア祭に取り込まれたという説もあります。
おまけ:ロウソクで子供は火傷しない?
大丈夫です。現在では、教会以外(特に幼稚園などの低学年)ではロウソク型の電球を用いています。
👇スウェーデンの幼稚園で行われた聖ルチア祭
子供たちがサンタルチアを歌いながら退場したのち、しばらくすると会場に明かりがつきます。すると、子供たちは『ルッセカット:Lussekatt』と呼ばれるパンを持って再び現れます。このパンとジンジャークッキー、そして『グルッグ:Glogg』といわれるホットワイン(子供用はノンアルコールです)の3つがスウェーデンにおけるルチア祭からクリスマスにかけて欠かすことのできない必須アイテムです(第10話でもお伝えしました)。
特にルッセカットというパンは、逆S字型をしており、上にはレーズンが2粒のせられているかわいいサフランパンです。サフランの色が光を象徴するとしてルチア祭には欠かせないのです👇
ルッセカット:Lussekatt と呼ばれるサフランパン
ジンジャークッキー、そしてグルッグ(Glogg)といわれるホットワイン
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スウェーデンでは、12月になると気温は急激に下がりだし、風が強く、天気は曇りや雨、そして雪となってきます。寒さも厳しくなりますが、人々が一番つらく感じるのは、日照時間が日を追って少なくなることです。朝8時頃になると少しずつ明るくなってくるものの、太陽の光は弱々しいのです。そして午後3時すぎになると、もう暗くなってしまいます。このような時期に、『闇から光が現れる』という考えが北欧において古くから支持されてきた理由といわれています。
聖ルチア祭が行われる国々は?
以下のスカンジナビア諸国と南欧の国々で伝統行事とされています
ウェーデン、デンマーク、ノルウエー、フィンランド、イタリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アイスランド、クロアチア。
私が聖ルチア祭で感じた最大の疑問は、この祝祭でなぜ『サンタルチア』というナポリの舟歌が歌われようになったのか? それは・・・
「五里霧中の海原で進路を照らして船を導くというナポリの船乗りたち。彼らにとっても、ルチア様は守護聖人なのです」ということなのです。このことから、ナポリの民謡であるこの歌が、光で照らす救い主という点でつながるとされているそうです。
今更ですが、最も大切なルチア様に関して:
聖ルチア像
*イタリアで貴族の娘としてシチリア島に生まれたルチア。12月13日と20日には、聖ルチア祭が毎年シチリア島で行われています。この祭りがなぜスウェーデンを中心として北欧で広がったのか?それは彼女が盲目の殉教者で「光の聖女」とよばれていたことが原点ではないかといわれています。ルチア様は、北欧の長くて暗い冬を光で照らす救い主として崇敬されるようになったそうです。
ルチアはキリスト教徒であるために迫害され、さまざまな拷問を受けました。最後は目に大きな損傷を与えられましたが、神の加護により目がみえたそうです。このことから、視力の聖人としても崇められているのです。
もっとトリビア:デンマークでの聖ルチア祭
デンマークで聖ルチア祭が初めて行われたのは1944年と遅かったのです。逆になぜ1944年に突然行われたか?それは第二次世界大戦中、ナチスドイツに国土を占領されていたデンマーク国民が「闇の中から光が現れる」という抗議の意味持って行ったとされています。その翌年、5月にドイツ軍は降伏し、デンマークは開放されたのです。それから、現在に至るまで、デンマークでは、聖ルチア祭が続けられています。
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