ービールの旬は、秋ですー
世界で最も消費量の多いお酒は、ビールです。
ビールといえば、夏といったイメージがあるかもしれません。暑い日によく冷えたビールをゴクゴク飲むのは最高ですね。でも、『旬の時季は?』と聞かれたならば、答えは『秋』なのです。なぜなら、収穫されたばかりのホップを使った美味しいビールが飲めるのは、9月下旬から11月にかけての間だからです。
収穫の時期をむかえたホップ
毎年秋になるとドイツ、ミュンヘンで開催される世界最大のビールの祭典は、「オクトーバーフェスト」とよばれ、600万人の人々が訪れます。
ミュンヘンのメイン会場には、旬のビールを飲むために大勢の人が集まります。
今回は、ビールについてのお話です。 お酒をまったく飲まない人もヨーロッパの雑学としてお読みください。なぜなら、現在作られているビールは、「ビールにおける3大発明」によって完成されたものであり、これらの発明はすべてヨーロッパ発なのです。そのうちの1つはデンマーク発であり、北欧はビールを世に広げることにも貢献したのです。
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そもそも・・・
1.ビールの起源は?
1)いつ?
紀元前4000年以上前とされています。
2)どこで?
メソポタミアです。チグリス川とユーフラス川に挟まれた場所で、現在のイラクの一部です。
矢印の領域が、「メソポタミア文明」が存在した場所です。
*メソポタミア文明:世界最古の文明。紀元前9000年頃から農耕が始まり、紀元前3000年頃までには青銅器や文字を使用するシュメール人の国家が成立していました。
3)なぜ、メソポタミアがビール発祥の地といえるの?
現存する記録として、紀元前3000年頃にメソポタミアのシュメール人が残した「モニュマン・ブルー」と呼ばれる粘土の板碑に当時のビールの作り方が描かれていたからです。
粘土の板碑
4)誰がどんな方法でビールを作ったの?
「自然の力で偶然に作られた」というのが、正解かと思われます。
それは、『麦の粥を(ぬれたパンいう説もあります)放置しておいたら、酵母(微生物)が入り込み、発酵がおきてビールができてしまった』と考えられているからです。つまり、『麦汁中の糖分を酵母がアルコールと炭酸ガスに分解し、ビールが作られる』というビール製造の基本過程が、偶然起きたのです。
さて、ここからが近代ビールについてです。
現代人が飲むようになったビールが完成するまでには、3つの大きな発明がありました。それについてお伝えします。
近代ビールにおける3大発明とは?(以下、時代順)
第1の発明
低温殺菌法:パスツールによる発明(1864-1866年、フランス)
ルイ・パスツール
フランスの細菌学者。低温殺菌法の開発者であり、狂犬病ワクチンとコレラワクチンの発明者でもあります。 パスツールは、ワインの腐敗を防ぐために低温殺菌法を発明しました。彼は、ビールの酸化もバクテリアや雑菌の働きが原因であるとし、出荷前のビールを60-70度の低温で20-30分間加熱することで、品質保持に劇的な効果を上げました。また、これによりビン詰めビールの長期保存も可能となったのです。低温殺菌法は、牛乳・乳製品などにも用いられ、食品や飲料の保存に大きな影響を与えました。
*もっとトリビア!:日本ではパスツールの発明より300年も前(1560年頃)に日本酒の製造に同じ方法が経験的に生み出され、実際に使われていました。これを、「火入れ」といいます。 凄いぞ、日本!
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第2の発明
アンモニア式冷凍機:リンデによる発明(1873年、ドイツ)
カール・フォン・リンデは、24時間に6トンもの製氷を行う冷凍機を開発しました。このことは、ビール製法にとても大きな革命をおこしたのです。
そもそも・・・
ビールの醸造法は、発酵した酵母が液体の上面に浮かぶ「上面発酵」と下面に沈む「下面発酵」に分類されます(前者の代表がエール・ビール、後者がラガー・ビールです)。
*私は長い間、「ラガー・ビール」とは、〇〇〇社の商品名だと勝手に思い込んでいました。
ビールの発酵には、「上面発酵」と「下面発酵」の2種類があります。
「下面発酵」最大の問題点:現在、多くの長所があるラガー・ビールは、大手メーカーの主流となっています。しかし、冷凍機が発明されるまでの長い期間、常温のまま、短期間で発酵・熟成が可能である「上面発酵」のエール・ビールに頼ってきたのです。それは、「下面発酵」は、低温でないと醸造が行えないという問題があったからでした。
つまり・・・
夏場に「下面発酵」によるラガー・ビール作りはできなかったのです。
夏場でない時期の醸造であっても、低温を保つ貯蔵庫の確保すらも大変なものでした。山のふもとに深い洞窟を掘り、この中に自然に凍結した川や湖から氷を切り出して詰め込むという、途方もない手間と費用を費やしたのでした1)。
ラガー・ビールを作るには、貯蔵庫の確保も大変でした。
大量の氷をつくることができる冷凍機の発明により、 醸造の季節が冬に限られていたのが、一年中可能になったのです。
1.木元富夫『近代ドイツの特許と企業社活動 ー鉄鋼・電機・ビール経営史研究ー』泉文堂. P132〜133, 2002.
冷凍機の開発により多くの醸造所が、下面発酵のラガー・ビールの製造を行うようになりました。それは、下面発酵には、以下の長所があるからでした。
- 品質が安定しやすい(低温で発酵するため、雑菌の繁殖が抑えられる)
- 大量生産に適している(低温での発酵は、管理しやすいため)
- 保存性が高い(下面発酵ビールは、長期保存が可能)
現代、下面発酵のラガー・ビールは世界中で人気のビールです。
第3の発明
酵母純粋培養法:ハンセンによる発明(1883年、デンマーク)
デンマークのカールスバーグ研究所でエミール・クリスチャン・ハンセンが、1つの酵母を分離して増殖させる「酵母純粋培養法」を発明しました。これは、ビール作りに好ましい性質の酵母のみを抽出・培養するもので、よりよいビールを作る酵母が、どこででも手に入るという画期的な発明でした。この発明はビール醸造業界に革命をもたらし、現在でも多くの醸造所で利用されています。ビールの歴史において非常に重要な技術が発明されたのです。
カールスバーグ:1847年に創業されたデンマークのビール醸造会社。ロゴには、デンマーク王室御用達の証である王冠がついています。現在、世界40か国に醸造所を持つ、世界第4位のビールメーカーです。
ビール以外で、優れたデンマーク製品として忘れてはいけないものがあります。それは、環境先進国が開発した「枕」です👇
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「近代ビールの3大発明」と呼ばれるこれらの発明は、すべてヨーロッパ発でした。ヨーロッパの知識と技術により、近代のビール製造方法が確立されたのです。
カールスバーグのビールは、デンマークではもちろん、北欧諸国で愛され続けています。このブログの読者は、自分の傍らに友達のようにビール瓶をおいている青年を見たことがあるでしょう? カールスバーグのビールは種類も多いですが、そのロゴは一緒です。
前回の最後に登場した青年の写真(アップ)をよく見てくださいね。
👇です。
*おまけとして:ビールと人魚姫像:
カールスバーグ社創立者のヤコブセン氏は、童話作家のアンデルセンと交流がありました。彼の息子カールは、王立劇場で見たバレエの演目「人魚姫」に感激し、彫刻家(エドヴァルド・エリクセン)に製作を要請し、完成品をコペンハーゲン市に寄付したのです。今では、人魚姫像もカールスバーグ社に負けないぐらい有名ですね。
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