今回は、歴史的に大きな意味を持つ実話であり、複雑な背景を抱えています。そのため、少しでもわかりやすくするため、最初にバックグランドを時系列に従い説明させていただきます。
Background1. 1944年6月6日:イギリス・アメリカ軍を主力とする連合軍は、ナチスドイツが占領しているフランス北部へ上陸するため、ドーバー海峡を渡りノルマンディ上陸作戦を行いました。世に語り継がれる「史上最大の作戦」です。
劇場映画としても、超大作として有名です👇
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この上陸作戦から、連合軍はパリを目指して進撃していったのです。ナチスドイツの敗北が迫ってきました。
この作戦によるアメリカ兵の悲劇を描いた「プライベート・ライアン」は、アカデミー賞を5部門で受賞しました。スピルバーグ監督の傑作とされています。👇
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連合軍は、上陸したノルマンディからパリに向かいました。
Background 2. 1944年7月:
ドイツ国防軍の将校(高級軍人)グループによるヒトラー暗殺計画が進められていました。その理由は、ナチ党が行う政策への反対、連合軍(イギリス・アメリカ軍を主力とする)との和平を目的としたものでした。ヒトラーへの暗殺計画は、とても多くあったとされています。しかし、高級軍人を中心とした大掛かりな暗殺計画は、それまでありませんでした。
7月20日: ヒトラー暗殺計画が実行されました。しかし、奇跡的にヒトラーは軽傷のみで助かり、暗殺計画とナチ党に対するクーデターは共に失敗に終わってしまったのです。この計画に関与したとされる将校、政治家、文化人らの600-800人程が逮捕され、ほとんどが死刑になってしまいました。
Background 3. 8月7日:
この暗殺計画にかかわらなかったことから、ディートリヒ・フォン・コルティッツ(ドイツ国防軍。彼は貴族出身の高級軍人でした)は、ヒトラーに呼び出され、歩兵大将に昇進し、ナチスドイツが占領していたパリの軍事総督に任命されたのです。
8月9日: コルティッツは、パリに着任しました。
連合軍は、ドイツ軍の激しい抵抗にも負けず、パリに近づいてきました。
着任前のコルティッツは、ヒトラーから「何としてもパリを死守しろ。パリを受け渡すということは、フランス全土を失うということだ」
さらに、「もし、撤退するようになれば、その前にパリを徹底的に破壊せよ。跡形もなく燃やせ」という2つの厳命を受けていました。
8月11日: アドルフ・ヒトラーは、「パリに架かる橋をすべて爆破した上で、最後の一兵まで戦うように」という命令を出しました。しかし、コルティッツ将軍は、市内での防衛は無意味であるとし、パリ外周での防衛に留めるように部下に指令を出したのです。
8月中旬ごろ:コルティッツは、レジスタンス運動により生じた捕虜やナチスドイツに逮捕された政治犯の取り扱いに関して4日間ほど時間を費やし、それぞれ解放、釈放を行ったとされています(この事実は、あまり公になっていません)。その時の交渉人の1人がラウル・ノルドリンクというスウエーデンの外交官(スウエーデン総領事)でありました。内容から考えて、かなり踏み込んだ話し合いが行われたと推察されます。
フランス軍を威嚇しながらも、大規模な市街戦をしないコルティッツ将軍。ノルドリンクは、彼の行動に察するものがあったのでしょう。
そして、ついにベルリンから爆破班のメンバーが送られてきました。いよいよ『その日』がやってきたのです。
パリ破壊計画に関する打合せ:1944年8月24日の深夜から25日にかけて
場所:ナチスドイツの総司令部がおかれていた、ホテル ムーリス。最上階にあるコルティッツ将軍の執務室。
ベルリンから派遣されてきた爆破班は、すでにパリの歴史的建築物、主要駅、セーヌ川にかかる33本の橋に爆薬を仕掛けたことをコルティッツ将軍に伝えました。
「この爆破により、時間が稼げます。連合軍は、ドイツには簡単に進撃できません。橋を爆破すれば、セーヌ川は氾濫します。石材が落下すれば川の流れが止まり、パリ南東部は直ぐに水没するため、電気や上下水道も使えなくなります」
「その後の爆破は?」
「橋の爆破から5分後、ノートルダム大聖堂・ルーブル美術館・オペラ座を次々と爆破し、主要な駅も爆破します。これで、パリの中心部が吹き飛びます」
「・・・」
「コンコルド広場周辺に3トン、下院内(国会議事堂)に4トン、アンヴァリッドの地下にも仕掛けました。エッフェル塔の脚には魚雷を・・・。凱旋門は、広場とともに吹っ飛び、シャンゼリゼ大通りまで突き抜けます。以上、全部で20分以内に終了します。パリは跡形もなくなります」
「予想される死者は?」
「市内で100~200万人です」
爆破班は説明が終わると、「あとはコルティッツ将軍からの命令を待つだけです」と言い残し去っていきました。
コルティッツ将軍は、執務室でぼんやりとしていました。ふと、人の気配を感じて振り返ると、そこには1人の人物が暗闇の中に立っていたのです。
その人は、昨日まで政治犯の釈放について一緒に調整を行っていた中立国スウエーデンの外交官(総領事)ラウル・ノルドリンクでした。
以下、「第7話:パリ破壊計画を阻止した男たち その2. 」へ
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