第5話:パリオリンピック・パラリンピック開催 を迎えて

―ナチスドイツにより爆破される直前であったパリのモニュメントたち―

1. オリンピック開催直前のパリ市内.

2. 世界中を驚かせたパリオリンピック開会式のプラン

3. ナチスドイツにより爆破される直前であったパリのモニュメントたち

補足:「エッフェル塔」は、世界遺産ではない?
   「パリのセーヌ河岸」という括りでの世界遺産

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1. オリンピック開催直前のパリ市内

フランスのパリにおいて、2024年7月26日からオリンピック、8月20日からパラリンピックがそれぞれ開催されます。

本年5月、パリ市庁舎

オリンピック開催を直前に控えたパリ市内では、普段は厳粛さを放っている市庁舎ですら、オシャレな垂れ幕で飾りつけられています。市庁舎前は、パリオリンピックでマラソンのスタート地点になる予定です。

パリでオリンピックが開催されるのは、1900年(第2回大会)、1924年(第8回大会)に続き、3回目です。前回のオリンピックから100年ぶりに開かれることになりました。

パリ市内の郵便ポスト

街中の郵便ポストも、フリージュというオリンピックマスコットでプリントされています。

*フリージュとは、フリジア帽。フランス革命において自由の象徴とされました。

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2. 世界中を驚かせたパリオリンピック開会式のプラン

世界中の人々を驚かせたのは開会式のプランです。それは、夏季五輪の歴史上初めて競技場の外で行われるというものでした。選手たちはパリの中心を流れるセーヌ川を多くの船に乗りわけられ、入場行進をするという壮大なものです。川の両岸には世界遺産に登録されているパリのモニュメントたちが背景となります(マクロン大統領は、セキュリティの面からリスク面が過大だと判断されれば、開会式の会場が変更する可能性について触れています)。

セーヌ川岸に立つエッフェル塔

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3. ナチスドイツにより爆破される直前であったパリのモニュメントたち

セキュリティ上の問題を乗り越えてでもセーヌ川を舞台として開会式を行いたいと考えたのは、フランス国民の強い思いがあったのではないでしょうか。なぜなら、第二次世界大戦末期、セーヌ川に架かる橋・ノートルダム大聖堂・ルーブル美術館。さらに主要の駅(オルセー美術館)・エッフェル塔・・・。これらパリのモニュメントたちを一斉に爆破するという、ナチスドイツによる恐ろしい計画がありました。それは単なる計画だけでなく、それぞれの建物に大量の爆薬が設置され、あとは爆破スイッチを入れるだけの状態でした・・・。しかし、パリは守られたのです。

パリオリンピックの開会式をセーヌ川でというプランは、フランスは自由と平和の地を獲得していることを世界に示す意味があるのではないでしょうか。さらに、驚くべきことは開会式だけではありません。今回のパリオリンピックでは、実際の競技が、歴史的構造物をランドマークとして行われる予定です。エッフェル塔の前ではビーチバレー、ベルサイユ宮殿では馬術、コンコルド広場はパリ大会で新たに加わるブレイキンの競技地に使用されるとのことです。

今回の舞台はパリです。北欧とは関係ない? いえいえ、影の主人公は、パリを破壊から守ったスウエーデン外交官です。次回にじっくりお伝えします。

その前に・・・ セーヌ川の両岸には、世界遺産に登録されているパリのモニュメントたちが多く点在します。ナチスドイツの爆破班が実際に大量の爆薬を仕掛けた歴史的建築物について確認しておきましょう。これらは、2024年パリオリンピックのランドマークになるものばかりです(以下、Googleの地図で位置関係も確認できます)。

上記の地図に記入されている番号は、下記の建築物冒頭の番号と一致します。

1)ノートルダム大聖堂:

火災前の大聖堂

パリのシテ島にあるローマ・カトリック教会の大聖堂。1345年に完成したゴシック建築の傑作といわれています。2019年に発生した火災により、屋根の尖塔が崩落してしまいました。現在、再建プロジェクトが進行中。2024年末に再開予定です。  日本には、パリのノートルダム大聖堂をモチーフにしたといわれている建築物があります。それは、1990年に完成した東京都庁舎です。設計を担当した丹下健三氏は、ノートルダム大聖堂をモチーフに設計したといわれています。

東京都庁舎第一本庁舎

2)ルーブル美術館:かつてフランス国王が住んでいた宮殿です。その壮大な建物と美術コレクションは訪れる人々を圧倒します。「モナ・リザ」などの数多くの有名美術品が所蔵され、世界で最も入場者数の多い美術館として知られています。

3)オペラ座(正式名は、ガルニエ宮):世界三大劇場の1つとされるオペラ座は、1875年に建設されました。ルネサンス様式とバロック様式の混在した折衷様式でパリ屈指の美しさを誇っています。

4)オルセー美術館:オルセー美術館は、1900年のパリ万国博覧会の開催に合わせて建築されたオルセー駅(鉄道駅兼ホテル)を改装したものです。1986年に美術館として開館しました。19世紀美術専門の美術館であり、モネ、マネ、ルノワール、ゴーギャンなどの印象派の作品が数多く収蔵されています。

5)コンコルド広場:1755年に建築家アンジュ=ジャック・ガブリエルにより設計され、当初は「ルイ15世広場」と呼ばれていました。しかし、フランス革命により、「革命広場」となり、皮肉なことにフランス国王ルイ16世とその妃であるマリー・アントワネットのギロチン刑が行われました(日本では、フランスの歴史というより、池田理代子さんの漫画『ベルサイユのばら』で有名になった感じがします)。さらにヴァンデミエールの反乱の後に「コンコルド(融和)広場」と呼ばれるようになりました。今回のパリオリンピックで正式種目になったブレイキン(ダンス)の競技地になる予定です。また、3X3バスケットボール、BMXフリースタイル、スケートボードらも開催されます。

6)ブルボン宮殿:古代ギリシャ風のコリント様式で建てられています。現在は、国会議事堂(下院の国民会議事堂)として用いられています。

7)アンヴァリッド(旧・軍病院、廃兵院):

1671年にルイ14世が傷病兵を看護する施設として計画し、1674年に最初の傷病兵たちが入ったとされています。教会には地下墓所が造られ、ここにナポレオン1世の棺が置かれたことから、今では観光地にもなっています。2024年のオリンピックでは、アーチェリー会場およびマラソンのゴール地点、自転車ロードレースのスタート地点としても使用されます

8)エッフェル塔:エッフェル塔はセーヌ川のほとりに立つ、パリのランドマークとして有名です。1889年のパリ万博の目玉として作られました。素材は、当時の最先端素材である炭素の含有量が少ない「錬鉄」が使用されました。建設当時、高さ312.3メートルは、世界最大の建造物でもありました。

今回のパリオリンピックでは、エッフェル塔のふもとにあるシャン・ド・マルス公園に、ビーチバレーボール競技のスタジアムが仮設されます。

 以上の8つの偉大なるモニュメントすべてに、大量の爆薬が仕掛けられました。でも、ナチスドイツの恐ろしい計画は、止められたのです!

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次回は、「パリ破壊計画を阻止した男たち」をお伝えします。

補足:「エッフェル塔」は、世界遺産ではない?

「パリのセーヌ河岸」という括りでの世界遺産

☆セーヌ川に点在する多くの世界文化遺産について:

「パリのセーヌ河岸」という括りで、建築物や橋などの24か所がまとめて登録されています(1991年)。具体的には、セーヌ川にかかるシェリー橋からイエナ橋までの約8キロメートルが登録対象です。

例えば、パリを象徴するエッフェル塔ですが、単体で世界遺産になったのではありません。「パリのセーヌ河岸」という括りで登録されているのです。


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