ースウエーデンー 発見した人物は、歯科医ではなかった!
チタンインプラントの発見は「偶然」であった!
1.デンタルインプラントって、何?
インプラントとは、医療器材を人の体に埋め込むことの総称です。歯科で使用されるインプラントは「デンタルインプラント」と呼ばれます。歯を失った場合に、人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける治療法です。近年では、インプラントと言えば、チタン製のデンタルインプラントを意味するようにまで、この治療法は広がってきました。
矢印がインプラント治療を行った歯(両隣は、天然歯)
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2.デンタルインプラントは、いつから研究されていたの?
インプラントの歴史は古く、なんとマヤ文明に遡ることができます。西暦700年代のマヤ族の遺跡から発掘された遺体の口腔内から、歯根と一体化した貝殻が発見されたのです。これは、死後に埋められたものでなかったため、欠損した歯の治療法として、インプラントが用いられていたことが明らかになりました。しかし、医学的な研究が行われたのは、20世紀に入ってからです。
3.チタンインプラントは、どうやって発明されたの?
20世紀になると世界中の歯学研究者たちは、骨(顎の骨)と結合する材料を本格的に探し出しました。鉄、金、エメラルド、サファイア、アルミニウムなど、さまざまな素材が多方面から試されました。しかし、どの国の誰がやっても、骨と結合する材料は、みつかりませんでした。
ところが、意外な人物がインプラントと関係のない実験中に画期的な発見をしてしまうのです。それは1952年、南スウエーデンにある動物実験室でのことでした。ルンド大学医学部で24歳の若き医師が、ウサギの大腿骨に生体顕微鏡を取り付け微少循環の観察実験を行っていました。
かなりの時間が経過し、観察に用いた器具を外そうとした時のことでした。骨に取り付けたチャンバーがくっついて外せなくなってしまいました。こんな時、普通ならば、慌てふためくのではないでしょうか?
ところが、彼は違ったのです。
「このチャンバーの金属は、骨と結合するのではないだろうか?」
彼は、さっそく顕微鏡の会社に連絡し、金属の種類を問い合わせしたのです。
金属は、「チタン」という回答でした!
この研究者が、若き日の整形外科医ペル・イングヴァール・ブローネマルク(Per-Ingvar Brånemark)先生だったのです。
その後13年間、彼は綿密な基礎実験と動物実験を重ね、チタンがある一定の条件で骨に埋入された場合、チタンに対する骨の拒否反応は全くといってよいほど起こらず、そればかりかチタンの表面を覆う酸素の膜を通して強い結合が生まれることを発見し、これをオッセオインテグレーション(Osseointegration)と名付けたのです。
彼は、偶然みつけた現象を緻密に調べあげ、「チタンは骨と骨結合する」という理論を確立させました。そして、1965年に歯科という専門外の分野であるにもかかわらず、人工歯根としての臨床応用をスタートさせたのです。
彼が発見したチタンインプラントは、世界中に広がり、デンタルインプラントとして認められていったのです。
1992年、ブローネマルク教授は、ミニノーベル賞とも呼ばれる、『the Swedish Engineering Academy’s equally prestigious medal for technical innovation』を受賞。その後、ノーベル賞の候補者になっているといわれてきましたが、受賞の声を聞くことなく、2014年に85歳の生涯を終えました。
文献)赤川安正:インプラントの100年と オッセオインテグレーションの進化. JICD 51: 28-33, 2020.
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